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東京地方裁判所 昭和47年(ワ)7754号 判決 1973年1月30日

原告 寺門昶

右訴訟代理人弁護士 大島淑司

同 長谷川成二

被告 株式会社 早川商店

右代表者代表取締役 早川信也

右訴訟代理人弁護士 林展弘

主文

被告が訴外日本技建株式会社に対する東京地方裁判所昭和四七年(ヨ)第四八八三号仮差押命令の執行力ある正本に基づき昭和四七年八月七日別紙物件目録記載の建物についてした仮差押は、これを許さない。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文と同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は訴外日本技建株式会社(以下、日本技建という。)に対する請求の趣旨記載の債務名義の執行力ある正本に基づいて請求の趣旨記載の建物(以下、本件建物という。)に対し仮差押(以下、本件仮差押という。)をした。

2  しかし本件建物は、以下のとおり、原告の所有に属する。即ち、

(1) 原告は、昭和四七年三月五日日本技建を請負人として、本件建物を工事代金三四五万円、引渡期日同年六月末日の約で建築する旨の請負契約を締結し、日本技建に対し、同年三月六日金一一〇万円、同月二七日金一一〇万円、同年四月一九日金一〇〇万円合計金三二〇万円を支払った。

(2) 日本技建は同年五月二二日ころ右請負工事全体の四〇%の工事を進めただけで倒産し残工事を放置したので、原告は日本技建に対し、右請負契約を解除する意思表示をした。

原告は、右解除をしたことによって、日本技建との間の請負契約約款に従い、右四〇%の出来高部分の建物についてその所有権を取得した。

原告は、その後同年七月一九日訴外安志真建設株式会社との間に右出来高部分の追加工事請負契約を締結し、同年八月末日本件建物の完成引渡によりその所有権を取得した。

3  よって原告は被告に対し、本件建物の所有権に基づき、本件仮差押の排除を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2のうち、原告が日本技建と本件建物の請負契約を締結したこと、日本技建が倒産し、原告が右契約を解除した事実はいずれも認めるが、その余の事実は知らない。

三  被告の主張

別紙準備書面記載のとおり。

四  被告の主張に対する認否

右準備書面第一、第二項中、被告と日本技建に関する事実は知らない。

同書面同項中、原告に関する部分は否認する。

同書面第三、第四項はいずれも争う。

第三証拠≪省略≫

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  同2のうち、原告が日本技建と本件建物の請負契約を締結した事実および日本技建が倒産し、原告が右契約を解除した事実はいずれも当事者間に争いがない。

三  ≪証拠省略≫によれば原告と日本技建との間に締結された本件建物の建築請負契約は一般の民間建設工事標準請負契約約款に従った契約であり、請負代金は、三四五万円であるが、建物完成期日である昭和四七年六月末日以前に代金総額の半額以上にあたる金二二〇万円を支払うべきものとされていること、および、原告は被告に対し昭和四七年四月一九日までに代金総額に近い金三二〇万円を支払っていること、これに対し、日本技建が倒産した昭和四七年五月二二日当時の本件建物の出来高は四〇%にすぎなかったことが認められ、これらの事実からすれば、建物の所有権は出来高に応じ原始的に注文者たる原告に帰属するものと解するのが相当である(最高裁判所昭和四四年九月一二日第二小法廷判決判例時報五七二号二五頁参照)。

四1  被告は別紙準備書面第三項において、右当裁判所の見解と異なる主張をするが採用することができない。

2  同準備書面第四項について

被告が原告に対してその主張のとおりの損害賠償請求権を有するとしても、このことは当該物件の所有権の帰属が問題とされる第三者異議の訴の許否の判断にとって何ら関係がないから、この点に関する被告の主張も採用できない。

五、右によれば、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 賀集唱 裁判官 荒川昂 裁判官大和陽一郎は転任につき署名押印することができない。裁判長裁判官 賀集唱)

<以下省略>

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